皇帝陛下の花嫁公募
「さあ、顔を洗ってください。まずは朝食をたっぷり召し上がって、それからゆっくりお支度をしましょう。湯浴みをして、髪も洗って……ぴかぴかにして差し上げますよ」

　ナディアは気合が入っている。

　彼女はリゼットが皇帝の花嫁に誰よりもふさわしいと固く信じているのだ。今日は婚約が決まる日だと思っているらしい。

　そんなに上手くいけばいいけれど……。

　そう思いつつ、アロイスとの別れで傷ついているリゼットにとっては、選ばれてもそうでなくても、どうでもよかった。

　どのみち、アロイスとは結ばれない運命だったのよ。

　それだけだ。

　ナディアはのろのろとベッドから出るリゼットを急かした。そして、宣言どおり顔を洗わせ、食事を摂らせ、湯浴みをさせて、とにかく全身をピカピカにした。

　そして、祖父が誂えてくれた流行のドレスを身に着ける。
< 133 / 266 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop