皇帝陛下の花嫁公募
 今日は試験の日とは違い、どの娘にも付き添いが多い。

 花嫁が決まる日だからだろう。リゼットにも、母妃とナディアの他にアマーナリアから来た一行、そして祖父はその愛人まで着飾ってついてきた。

 しかし、付き添いは別室に通され、五人の花嫁候補は玉座以外何もない大広間に通された。

 花嫁候補の他には、いつも宮殿内のあちこちを守っている衛兵が数人いた。やがて審査に関わっていたいつもの女官がやってきて、話をする。

「もうすぐ陛下がいらっしゃいます。これから先、おしゃべりはしないこと。身を屈め、頭を下げ、陛下がいいとおっしゃるまで顔を上げないこと。自分から陛下に話しかけないこと。以上、お願いします」

 言われたとおり、五人は一列に並んで、身を屈め、頭を下げた。すると、前方の扉が開く音がして、軍靴のようなしっかりとした足音が聞こえてきた。

 皇帝陛下なのだわ……。

 リゼットは急にドキドキしてきた。

 花嫁に選ばれるかどうかはどうでもいいと思っていたリゼットだったが、選ばれたほうがみんなに喜ばれるのだと思い返した。

 しばらくして声が聞こえてきた。

 聞き慣れた声が。

「顔を上げるがいい」

 アロイスの声……?
< 135 / 266 >

この作品をシェア

pagetop