皇帝陛下の花嫁公募
 騙されていたことを思うと、愛の告白も嘘だったのだ。そうとは知らず、彼に別れを告げて、一晩泣き腫らしてしまった。

 一通り踊ると、アンドレアスはまた別の娘の手を取り、踊り始める。

 こんなの、茶番だわ!

 さっさと一人に絞って、本当に花嫁になる人と踊ればいいのだ。そうしたら、他の四人は馬鹿みたいにこの茶番を眺めずに済むのに。

 できることなら、今すぐこま大広間から出ていきたい。けれども、王女の義務がそれを押し留めていた。それに、そんな馬鹿な行動を取ったと知ったら、新しいドレスを誂えてくれた祖父に叱られてしまう。

 花嫁になれなくても、アマーナリアへの援助を嘆願するつもりだったけど……。

 アンドレアスが皇帝としてちゃんと仕事をしているのかどうかも疑わしいと思った。だいたい、花嫁を公募して試験をするなんて、それ自体、少しおかしい。そんな皇帝はアマーナリアの窮状など把握してないだろうし、それこそ、アマーナリアがどこにあるのかも知らないかもしれない。
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