皇帝陛下の花嫁公募
 アンドレアスはヴァンダーン帝国を愛している。幼い頃からこの国の皇帝になるのだと言い聞かされて育ってきた。皇帝となるからには、国に身を捧げなくてはならないのだと。

 ゲオルグにはそんな覚悟などありはしない。万が一、彼が皇帝になどなったら、政務もそっちのけで毎晩、女をはべらせて酒盛りすることだろう。

 跡継ぎが必要なのは判っている。だが、今のところ結婚する気はなれない。

 だいたい、ネスケルが勧めてくる女が気に食わなかった。

「判った。結婚しよう」

 その一言で、ネスケルはほっとしたようだった。

「では早速、舞踏会を開き、お相手の候補を招待して……」

「おまえの勧めるような女はいらない」

「なんですと? 私の推薦する女性はどなたも上品な従順な王女か、貴族の姫君ばかりで……」

「それがよくないと言っている。私が求めているのは自分の意見がはっきりと言えるような女だ。そして、いざとなったら馬に乗り、私と一緒に戦えるくらいの気丈さを持った女がいい」

 ネスケルは絶句していた。

 王女や貴族の姫に、そのような女がいないことはよく知っている。

「そ、そんな方をどうやって見つければいいのか……」

「簡単なことだ。公募すればいい。帝国内の娘なら誰でも立候補できる」
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