皇帝陛下の花嫁公募
 窓を開けると、彼が入ってきた。

「リゼット!」

 正面からギュッと抱き締められて、リゼットは身も心も溶けていくようだった。

 彼に対して嘘をつかれたとか、いろんな小さなことで腹を立てていたが、それも彼の温もりの中ですべて溶けて流れていく。

 やっぱり彼が好き。愛してる。

 胸がキュンと締めつけられる気がした。

「私が悪かった」

 彼が素直に謝ってくれた。

 リゼットはそれだけでもう嬉しかった。

「いいの……。わたしもごめんなさい。アマーナリアのことも、正直に話しておけばよかった。そうしたら……」

「いや、君が得体の知れない男に、王女だなんて言わなかった理由は判っている。私も……自分のことばかり考えていて、警戒していたんだ」

「警戒って……?」


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