皇帝陛下の花嫁公募
「結婚相手はきちんと選びたいと思っていた。一度結婚したら、必ず添い遂げる。他の女と遊ぶつもりはない。だからこそ慎重になっていた。身分ではなく、自分を本当に愛してくれる相手と結婚して、子をつくり、家庭を育みたいと……」

 リゼットは小さく頷いた。

 彼は母親が早く亡くなったと言っていた。継母がいないところを見ると、彼の父親も他の女性とは再婚しなかったのだ。つまり、それだけ一途だったということだろう。

 そして、彼も父親と同じなのだ。

「隣国との小競り合いがいつもあり、皇帝となってから私はずっとそちらのほうに力を注いできた。軍隊を指揮し、自分を軍人の一人のように思っていたが、最近になってネスケルから結婚を勧められた。そのときは公募すればいいと言ったが、後になって自分の一生に関わっている妻、そして国に大きな影響を与える妃はいい加減に選べないことに気がついたんだ」

「そうね……。私も最初、花嫁を公募するって、なんていい加減な皇帝かしらと思ったもの」

 彼はクスッと笑って、リゼットの髪をそっと撫でた。
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