皇帝陛下の花嫁公募
「君は他の娘達とは何かが違っていた」

「ドレスとか?」

「それもあるが、まず、その黄金色の長い髪や宝石みたいにきらめく緑の瞳にやられた。それから、自分の国が馬鹿にされて怒っていたところを見て、その愛国心が気に入った」

「そういえば、あのときの失礼な人達はもう見かけなかったけど」

 彼はクスッと笑った。

「ああ。あれは本当に無礼だったからな。叱責して交替させた。が、あの女官達も君は気に入らなかったみたいだな」

「あれは……子供を泣かせても平気だったからよ。それだけ」

「孤児院の子供達と花嫁候補を遊ばせて、その様子を見たいということだったから許可したんだが。彼女達も子供が泣くのでどうしたらいいのか判らなかったらしい」

「無責任だわ!」

「確かに。だが、その代わり君が一番小さな子を抱いて、彼女達に突進していくのが見られた。君はまるで怒れる親みたいで、自分の子もあんなふうに守るんだろうなと思えた」

 あんなところも見られていたのだ。まったく気づきもしなかった。

「あのときは、腹が立ってしまって……。わたし、意外と気が短いの」

「それはよく判った。だが、私もそうだから、お互い様だな」

 彼は抱き締めていた腕を緩めて、リゼットの顔を見つめた。
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