皇帝陛下の花嫁公募
「君は私に惹かれている……。そんな気がしたから、なんとか口説こうと思っていた。いい年をして馬鹿みたいかもしれないが、皇帝でなくても結婚すると言ってもらいたかったんだ」

 彼の真意はそこにあったのだ。騙してはいたが、結婚したいと思った相手の気持ちをどうしても確かめたかったのだろう。

「判るわ。その気持ち。わたしだって、義務さえなければ……」

 彼はリゼットの目を覗き込むようにして囁いた。

「義務さえなければ、アロイスと結婚したかった?」

「ええ。だって……」

「だって?」

 彼はリゼットの本当の気持ちを言わせようとしている。

 なんだか照れくさいが、彼が聞きたい言葉なら言ってあげたい。

「愛してる人と結婚したいから」

 囁くようにその言葉を口にした後、リゼットは急に恥ずかしくなって彼の肩口に顔を伏せた。

「リゼット……愛してるよ」

「わたしも……」

「顔を上げてくれないか?」

「何故?」

「キスをしたいから」
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