皇帝陛下の花嫁公募
胸がキュンとなって、ゆっくり顔を上げた。彼がリゼットを包むような優しい眼差しを向けている。

 そっと唇が重なった。

 キスだけでこんなに幸せを感じられるなんて知らなかった。

 以前したキスは、自分に迷いがあるときのキスだった。だが、今度のキスは本当に愛を確かめ合うキスで……。

 リゼットの頭の中はふわふわとしていて、自分が自分でなくなったみたいだった。

 彼は唇を離すと、さっと跪いた。

「えっ、何?」

 リゼットの手から指輪を抜き取ると、改めてその指輪を捧げ持った。

「私の花嫁になってほしい」

 彼はちゃんと求婚してくれているんだわ!

 リゼットの胸は感動でいっぱいになった。

 誤解はみんな解けた。もう、なんのわだかまりもない。

「ええ。あなたの花嫁になります」

 リゼットが答えると、彼は指輪をはめて、その指先にキスをする。

 わたし、きっと幸せになるわ。絶対よ!

 今まで自分は政略結婚しかできないと思っていた。それなのに、ちゃんと恋愛ができて、その相手は結婚できるのだ。

 こんなに嬉しいことはないわ!

 リゼットは幸せに包まれていた。
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