皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットと母妃は一旦、アマーナリアへと向かった。

 花嫁衣装や皇妃となったときのドレスなどはすでに作られつつあるので、挨拶をするために帰ったようなものだった。

 結婚してしまえば、そんなに頻繁には帰ってこられないからだ。小さい弟妹などは、リゼットの顔も忘れてしまうかもしれない。会えなくなるのは悲しいが、皇妃にならなくても結婚すればそれはよくあることだ。

 一足先に、皇帝の花嫁になることを手紙で知らせていたので、帰ったときには国中大騒ぎといった感じだった。城ではささやかではあるが、歓迎の宴が開かれて、リゼットはその主役となった。

 小さな田舎の国の王女が大帝国の皇妃となるわけだから、騒ぐのも判る気がするが、リゼットとしては、アンドレアスが援助金を出してくれることが一番のお土産のつもりだった。

 もっとも、これは父王や王太子のエーリク、それから近しい側近しか知らないことだ。アマーナリアが貧しい国だということはみんな知っているものの、どのくらい貧しいかは財政に近い人物しか知りようがないからだ。

 とはいえ、そのことについては胸を撫で下ろしたし、リゼットは父から感謝された。
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