皇帝陛下の花嫁公募
 親しい人達には挨拶をして回った。護衛のテオと一緒に農作業の手伝いに行っていた村へも向かい、自分が本当は王女だったことも明かした。

 アンドレアスとのことがあって、嘘はよくないと思ったからだ。それに、もうずっと手伝いに行くこともないし、彼らに会うこともないのだから、やはり最後に本当のことを言っておきたかった。

 彼らはもちろんひどく驚いていたが、リゼットの嘘を快く許してくれ、結婚のお祝いを口にした。

 リゼットは自分の持ち物の中から、どうしても持っていきたい物だけを荷作りした。ドレスはほとんど妹達のために残しておくことにして、少年の服はこっそり荷物の中に入れた。後でナディアに見つかって、呆れられていたが、何かあったときのために必要だと思ったのだ。

 宮殿の中で暮らすのに、あまり必要とは思えないが……。

 わたしだって、いつまでも少年の服が似合うとは思えないし。

 結婚すれば子供も生まれる。そうなってしまえば、少年のようには見えないだろう。

 ナディアは宮殿内に気になる男性がいるみたいで、リゼットについてきてくれるという。そして、テオも宮殿に衛兵がいるとはいえ、リゼット個人の護衛をしたいと言ってくれたので、連れていくことにする。

 ナディアもテオも幼馴染なので、リゼットには心強い味方となってくれることだろう。やはり宮殿での生活は慣れるまでが大変そうだったからだ。

 ただでさえ、結婚生活は初めてなのだ。それ以外のことにはなるべく煩わされたくなかった。
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