皇帝陛下の花嫁公募
「皇帝陛下のご意向でね。一時的とはいえ花嫁を住まわせるには少し物足りないと思われたのだろうな」

 あまり手入れされていなかった屋敷だったから、改修されて綺麗になっている。結婚式まで間もないのにと思いながらも、祖父がこんなに喜んでいるのだから、アンドレアスには文句をではなくお礼を言ったほうがいいだろう。

 孫娘が皇妃になるという話は、祖父の仕事にいい影響を与えているようだった。祖父の羽振りがよくなるということは、ひょっとしたらアマーナリアにも援助してくれるもしれず、今のところすべて上手くいっている。

 上手くいきすぎて怖いくらい……。

 結婚して、皇妃となった自分の生活が、リゼットはまだ思い描けないでいる。どんな暮らしをすることになるのかも今はまだ判らない。それでも、愛するアンドレアスと結婚できるのだから、それだけでも幸せなはずだ。

 リゼットはアンドレアスの姿を思い描いた。

 わたしが欲しいのは彼だけ。

 彼とつくる温かい家庭だけ。

 不安はあるけれど、それを抑えつけて、なるべく幸せな暮らしを思い描いた。
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