皇帝陛下の花嫁公募
 今日もリゼットは畑に出ていた。

 秘密の通路から部屋に戻ると、音を聞きつけたナディアが隣室からやってきた。

「国王陛下がお呼びですよ! 早くお支度をしなくては!」

「お父様が? 一体なんの用事かしら」

「さあ、判りませんけど。すぐに湯浴みの用意をしますから、その服を脱いでください」

 父王の用事は、結婚相手を早く決めろという催促かもしれない。

 というか、父王はリゼットの顔を見る度に、その話をしたがっている。今までなんとか避けていたが、もうそろそろ限界なのかもしれなかった。

 判っているわ。結婚して、それと交換にこの国に富みをもたらすのが自分の使命だということは。

 リゼットの頭の中に、今まで相手から送られてきた絵姿が浮かんだ。

 どれもそれなりだが、だいたい絵姿というものは実物よりよく描いているものだ。リゼット自身の絵姿もかなり美化されていた。

 でも、結局、お互いの容姿なんか関係ないのよね……。

 もちろん好みも関係ない。あるのは取引のみだ。
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