皇帝陛下の花嫁公募
 一応、アンドレアスの叔母なのだから敬意を払うつもりでいたし、やりたいことがあるなら、なんでもしてもらって構わないのだ。けれども、宮殿を取り仕切る者が二人もいてはならない。

 けれども、女官長がああなら、その下の女官達も似たようなものかもしれない。彼女達が公爵夫人の味方だと厄介なことになりそうだった。

「でも、公爵夫人は姫様……失礼、皇妃様とは顔を合わせたくないみたいですね」

 リゼットは少し笑った。

「ナディアに皇妃様なんて言われると、なんだかおかしいわ。リゼットにしてもらえない?」

「いいですよ、リゼット様。公爵夫人は何を企んでいるんでしょう?」

「そうね……。なんだと思う?」

「リゼット様から権力を奪いたい? でも、陛下はリゼット様のお味方をするでしょうし」

 まずは、やはり宮殿を案内してもらって、公爵夫人の居場所を突き止めよう。対決するより、今は腹の探り合いをする。それから、味方を増やしていって……。

「なんだか楽しくなってきたわ!」

 宮殿のしきたりを覚えるより、ずっと楽しそうだ。アンドレアスに倣って、女官に変装するのも悪くない。だいたい、皇妃がわざわざ女官のふりをするなんて、誰が思うだろうか。
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