皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットは帽子を取ると、長い金色の髪をひとつにまとめてピンで頭に固定する。そして服を脱いで、大急ぎで用意された浴槽に入って、汚れを落とした。

 いくら畑仕事に出ているのを知られているとはいえ、さすがに国王に薄汚れた姿を見せるわけにはいかない。

 こざっぱりとしたドレスを身に着けると、すぐさま国王執務室へと向かった。

 扉の前にいた秘書官は、リゼットを見るなりすぐさま執務室の扉を叩いた。

「リゼット姫がお出でになりました」

「入るようにと」

 扉が開かれると、リゼットはしずしずと中に入って、机についている父王に向かって上品にお辞儀をしてみせた。

「そんなにお上品にする必要はない。どうせ畑に出ていたんだろう?」

 やはりばれていたのか。いや、呼ばれてから来るまでに時間がかかれば、そう思われても当たり前だ。

「お父様の大事な国民のお手伝いをしていたのよ」

 父王は溜息をついた。

「まあいい。そこに座りなさい」
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