皇帝陛下の花嫁公募
 本当はエリーゼティア・ミーゼン・メル・アマーナリアという長ったらしい名前なのだ。だが、だいたいリゼット姫と呼ばれているし、自分もリゼットとしか思えない。

 この国に生を受けて十八年。少女から大人になりつつある十八歳だが、男子にしか継承権がないこの国では、リゼットは政略結婚の駒でしかない。

 アマーナリアは裕福な国とは言いがたかった。辺境で湿地が多く、作物もあまり育たない小さな国だ。

 周辺の国々に征服されなかったのが不思議なくらいの弱小国だが、豊かな実りもない国なので、征服するほど魅力がなかったのだろう。

 いつしか、ヴァンダーン帝国の一部になってしまったが、それでもアマーナリア王国は存続していた。ひょっとしたら、帝国の隅っこにある小さな国のことなで、忘れられているだけかもしれないが。

 かくして、アマーナリアは昔も今も貧しい国だ。
 だから……王女の使命は『できるだけ身分の高い裕福な男性の妻になること』だ。
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