皇帝陛下の花嫁公募
 ヴァリウス帝国の皇帝の話は聞いたことがある。若くして帝位についた彼は、隣国からの侵略を撃退するために自ら兵を率いたのだという。

 歴代の皇帝も軍隊に力を入れてきたらしく、それ故に大帝国となったのだが、すでに大帝国の皇帝である人物がそこまで軍に関わっていることはめずらしいと思う。

 だからこそ、花嫁公募などという型破りなことを考えついたのだろうか。

「健康で、子を何人も産めそうなら身分は問わないということだろう」

 父王はこの花嫁公募の件をそう解釈したようだった。

「牛や馬じゃあるまいし……。でも、結局は身分の高い貴族の娘を選ぶんじゃないの?」

 書状には、あまり詳しいことは書いていない。とにかく花嫁になりたい者は期日までに帝都へ行き、宮殿にて受付を済ませることしか書いてなかった。

 いや、よく見ると、他にも書いてある。花嫁と決まった者の家にはそれなりの援助をすると書かれている。
 花嫁に見合った金額を……。

「リゼット……」

 父王が咳払いをした。リゼットは父王にそっと目をやった。これから何を言われるか、判っていたからだ。
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