皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットはずっと結婚話をのらりくらりと先延ばしにしてきた。

 まだ結婚したくないその一心で。

 だが、自分はもう十八歳だ。弟と妹がたくさんいる。この国のためにそろそろ犠牲になるときがやってきたということだろう。

 もちろん、皇帝の花嫁に選ばれるかどうかは判らないけれど。

「お父様はわたしに帝都に行けと……?」

「行ってくれないか、ということだ。おまえは健康な未婚の娘だろう? しかも、一応、王女だ。身分だけは皇帝の花嫁として申し分ない」

 そう。一応、王女だ。皇帝自身も忘れているのではないかと思えるくらい辺境の小さな国の王女だが。

 一般的に皇帝の花嫁に選ばれるには、縁続きであるとか、政略的なものとか、とにかくそういった特別な条件が必要なのだ。リゼットの立場なら、皇帝にお目通りするのも難しいくらいだ。

 しかし、この場合、健康で未婚なら誰でもいいという。

 確かに願ってもない機会だ。
< 21 / 266 >

この作品をシェア

pagetop