皇帝陛下の花嫁公募
 何故? どうして急にそんな顔をしているの?

 リゼットは戸惑った。今さっきまで優しく肩を抱いて、労わってくれていたというのに。

「君はしばらくアマーナリアに帰りたまえ」

「え……どういうことなの? わたし……」

「公爵夫人は私の叔母だ。そして、ゲオルグは従兄弟なんだ。どちらもそんなに親しくはないし、好きでもない。だが、血は繋がっている。親戚なんだ。その二人を君は証拠もなしに憶測だけで疑った」

「アンドレアス! それはそうだけど……」

「私は温かい家庭が欲しいと言った。しかし、親戚だって大事にしたい。そう考えていたとは思わなかったのか?」

 アンドレアスは冷たい眼差しをリゼットに向けてきた。

 胸の奥が冷たい手で鷲掴みされたような衝撃を受けて、リゼットは何も言えなくなってしまう。

 そう。彼はその気になれば、こんな冷たい目で人を見ることができるのだ。

 まるで、おまえなんかに関心はない、といった目つきだ。
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