皇帝陛下の花嫁公募
「……でも、実際にナディアは……」

「犯人はゲオルグではない。私はそう思っている」

「だけど……!」

「とにかく君は今すぐ用意して、国に帰ってもらいたい。君の側近達も全員だ。私が許すまでずっと」

「アンドレアス!」

 リゼットは手を伸ばしたが、彼はさっと身を翻し、去っていく。

 リゼットはその後ろ姿を見つめていた。

 前にもこんなことがあった。彼の求婚を断ったときのことだ。同じように、自分は彼の後ろ姿を見ていたのだ。

 嘘でしょ……。

 結婚したのに。しかも、一緒に過ごしたのはたった一夜なのに。

 わたしはもう国に返されてしまうの?

 彼が一生大事にするとか言ったのは、なんだったの?

 リゼットはしばらくベッドから動けなかった。
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