皇帝陛下の花嫁公募
 アンドレアスはリゼットの部屋を出て、深い溜息をついた。

 リゼットの護衛のテオが一瞬、怪訝そうな顔をしたが、すぐにうつむいて表情を隠した。

 テオはリゼットの幼馴染で兄のような存在だと聞く。忠実すぎるくらい忠実で、テオが実はリゼットのことを愛していても不思議はないような気がした。だが、彼はリゼットの幸せを一番に考えている。だから、彼に任せておけば、必ずリゼットを守ってくれることだろう。

 アンドレアスは黙って、廊下を歩いていく。

 リセットを傷つけたかと思うと、胸が痛くてならない。もちろん、アンドレアスは彼女より公爵夫人やゲオルグが大切だなんてことは絶対ない。しかし、リゼットの安全を考えると、まずこの宮殿から遠ざけるのが一番だ。

 正論を解いても、彼女は納得しない。それどころか、宮殿に残ると言い張るだろう。だから、心が痛むが、彼女に冷たくするしかなかった。

 事件が解決したら、平謝りをしなくてはならない。彼女は許してくれるだろうか。

 いや、それよりこの件を解決するのが先だ。この宮殿で皇帝または皇妃の毒殺を目論む輩がいるということは確かなのだ。ワインには確かに毒が混入していて、それでナディアは倒れたのだから。
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