皇帝陛下の花嫁公募
 もし皇妃になれれば、この国も少しは皇帝に気にかけてもらえるかもしれない。まさか自分の后の実家が困窮しているときに背を向けたりしないだろう。

 いや、皇帝がどんな人なのか全然知らないけど……。

 身分に関係なく花嫁を公募するくらいだから、相当の変人だと思う。容姿も期待できない。それでも自ら軍を指揮する人ならば、自堕落で退廃的な男というわけではないと思う。

 どうせどこかに嫁がなくてはならないんだから……。

 裕福な貴族やら大商人やらにお金と引き換えで結婚するよりは、皇帝と結婚するほうがずっといい。

 それに、この国に必要なのはそこそこの大金ではなく、多額の援助だ。皇帝になら可能だ。

 そうよ。どうせ結婚するなら皇帝よ!

 リゼットは決心して、顔を上げた。

「判ったわ、お父様。わたし……やるわ! 絶対、皇帝の花嫁になってみせる!」

 下剋上よ! 玉の輿よ!

 集まった花嫁志望の娘達から、どうやって選ばれるのか判らないが、健康で丈夫なのは間違いない。

 父王はリゼットの決心を聞くと、ほっとしたようだった。
< 22 / 266 >

この作品をシェア

pagetop