皇帝陛下の花嫁公募
「皇妃様の件は……」
「予定どおりアマーナリアに帰す。彼女に何かあったら、私の跡継ぎも生まれない。私にとってはただ一人の妃だからな」
ネスケルは浮かない顔で頷いた。
「あのワインに毒を仕込んだのは誰だと思われますか?」
「やはり……隣国のスパイだろう」
隣国はアンドレアスの結婚式を狙って国境を越えて侵入してきた。それ自体はあり得ることだが、問題はそれ以上にこちらに攻撃を仕掛けてこなかったことだ。正確には、少し仕掛けて、すぐに引いていく。それを巧妙な形で繰り返していて、軍はそこに釘付けになっていた。
つまり、アンドレアスを宮殿に帰したくなかった。宮殿で何かが起ころうとしていたのだ。
それにしばらく気づかなかった自分が情けない。気づいてからは、総攻撃をかけて撃退した。そして、二度と煩わせられないように、精鋭部隊を今もそこに置いている。
「スパイと通じていたのは……信じたくなかったが公爵夫人だろう。権力欲しさと息子可愛さに国を売るような真似をした」
恐らく公爵夫人はスパイを利用しているつもりだったのだろう。ゲオルグを皇帝にすれば、領地の一部を渡すとか、そういった約束をしたのかもしれない。
そして、狙われていたのはリゼットだ。彼女とその側近が公爵夫人の野望を砕いたのだ。ナディアとテオはリゼットを守るために、隙を見せないようにしていた。しかも、リゼットは下働きの者や厨房で働く者の心を掴んでいたことが有利に働いた。
「予定どおりアマーナリアに帰す。彼女に何かあったら、私の跡継ぎも生まれない。私にとってはただ一人の妃だからな」
ネスケルは浮かない顔で頷いた。
「あのワインに毒を仕込んだのは誰だと思われますか?」
「やはり……隣国のスパイだろう」
隣国はアンドレアスの結婚式を狙って国境を越えて侵入してきた。それ自体はあり得ることだが、問題はそれ以上にこちらに攻撃を仕掛けてこなかったことだ。正確には、少し仕掛けて、すぐに引いていく。それを巧妙な形で繰り返していて、軍はそこに釘付けになっていた。
つまり、アンドレアスを宮殿に帰したくなかった。宮殿で何かが起ころうとしていたのだ。
それにしばらく気づかなかった自分が情けない。気づいてからは、総攻撃をかけて撃退した。そして、二度と煩わせられないように、精鋭部隊を今もそこに置いている。
「スパイと通じていたのは……信じたくなかったが公爵夫人だろう。権力欲しさと息子可愛さに国を売るような真似をした」
恐らく公爵夫人はスパイを利用しているつもりだったのだろう。ゲオルグを皇帝にすれば、領地の一部を渡すとか、そういった約束をしたのかもしれない。
そして、狙われていたのはリゼットだ。彼女とその側近が公爵夫人の野望を砕いたのだ。ナディアとテオはリゼットを守るために、隙を見せないようにしていた。しかも、リゼットは下働きの者や厨房で働く者の心を掴んでいたことが有利に働いた。