皇帝陛下の花嫁公募

 そこへ、テオが真面目な口調で口を挟んでくる。

「その近衛兵とずっと一緒に廊下で待っていたから、少し話をさせてもらった。その縁で、ゲオルグがあの慰労会に紛れ込んで飲んでいたのを見ていた兵士から話が聞けたんだ」

 ナディアが意識を取り戻していないあのときでも、テオは犯人を追いつめることを考えていたのだろう。

「それでどうだったの?」

「その前に、ゲオルグという男に関して、俺達は少し間違った認識をしていたんじゃないかと思うんだ」

「どういう意味?」

「あの男はアンドレアスの跡継ぎができなければ、確かに次の皇帝ということになる。だが、公爵夫人がそれを強く望んでいるのに対して、本人はそうでもない。それどころか、面倒くさいから皇帝などなりたくないと思っているらしい」

 リゼットは目をしばたたかせた。

「そんな……。本当に?」

「あいつは政治や戦争などどうでもよくて、戦場に行くなんてとんでもないと考えている。興味があるのは、派手に金を使ったり、賭け事をしたり、女と遊んだり……そういう自堕落な遊びだけだ。ところが、皇帝になれば義務に縛られる。あいつのいいところは、それを一応理解している点だな。だから、そもそも野望なんて抱いてない」

「クズすぎるわね……」

 帝位に手が届くところにいるのに、それを手に入れたくないなんて信じられない。しかも、面倒くさいという理由で。
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