皇帝陛下の花嫁公募
「いや……。公爵夫人は息子を溺愛している。皇帝にしたいはずだ。それに、やはり利権絡みの件がある。リゼット様がそれに気づいたら、皇帝に伝わる。皇帝に気づかれたら……と思うと、手っ取り早くゲオルグを皇帝にしたほうがいい。ひょっとしたら、公爵夫人は息子が皇帝になったら、自分が政治に乗り出すつもりだったかもしれないな」

 裏で暗躍するのが好きなようだから、それはあり得る。

 ただし、それでもゲオルグが狙われる理由が判らない。それに、公爵夫人が工作員を雇ったのではないとしたら……。

「他国のスパイ」

 リゼットがぽつんと呟くように言うと、テオは大きく頷いた。

「恐らく隣国の……」

 それでも、隣国のスパイがゲオルグを殺そうとする理由が判らなかった。

「まだ情報が足らないな。ところで、あの宮殿もアマーナリアの城のように秘密の通路があるのを知っているのか?」

「えっ、そうなの?」

 アンドレアスは教えてくれなかった。とはいえ、結婚してから、彼とはほとんど一緒に過ごしてないのだ。教える暇なんかないだろう。

 テオは懐から紙を取り出した。

 自分達で作成した宮殿の見取り図の一部だ。
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