皇帝陛下の花嫁公募

 皇妃の部屋は皇帝の部屋の近くにある。アンドレアスの身を守るために、できるだけ近くにいたかった。

 隠れながらじゃ、どんな役に立てるのか判らないけれど。

 でも、アマーナリアに引っ込んでいるよりはずっと役に立つはずだ。

「裏門の門番とは仲良くなったから、入れてくれるかもしれないわ。でも、念のため変装して……」

「俺も情報が欲しいから変装する」

「それじゃ、わたしも……」

 ナディアもそう言い出したから、リゼットは慌てて怖い顔で首を横に振った。

「ダメよ、あなたは。この屋敷で静養していて。危険があるかもしれないから」

「リゼット様……わたしは後悔したくないんです! リゼット様とテオが宮殿に潜入している間、もし何かあったら……。危険があるなら尚更、ここでのうのうとしてられません! それに、体調もいいんです!」

 彼女の気持ちも判る。だが、本当に大丈夫だろうか。自分はそれを許していいのだろうか。ナディアを残していくほうが、もしくは他の誰かを代わりに連れていくほうが、本当に彼女を思いやることなのかもしれない。

 でも……どうしよう。

「判った、ナディア。連れていこう」

 迷っている間に、テオが先に決断を下してしまった。
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