皇帝陛下の花嫁公募
「リゼット様、絶対お役に立ちますから! わたし、掃除婦の格好をしていくわ! 掃除婦は頭にスカーフをつけて顔が見えにくいし、女官やら貴族なんかは掃除婦がそこにいても、視界に入らないみたいなのよ」
「テオ……」
リゼットはテオに困惑の視線を向ける。テオは大丈夫だというふうに頷いた。
「ナディアは必要だ。あまり人数が多くても潜入しにくいが、リゼット様は別として、他に動ける人間が二人はいる。それなら、その二人は俺とナディアしかいない」
三人は幼い頃から一緒にいて、気心が知れているからだ。そして、完全に信用できるから。
リゼットは頷いた。
「判った。でも、ナディア……無理だけはしないで」
「判りました。無理はしません。でも、できるだけのことはします。……今、思ったんですけど、スパイも一人では潜入してないんじゃありません?」
「確かにそうだ」
テオも同意する。
「男女のペアかもしれない。ナディアの言うとおり、掃除婦ならどこにでも怪しまれず入れる。ゲオルグが狙われた謎がまだ解けないが……」
「公爵夫人もまだ候補から外れたわけじゃないから、そちらも注意していないといけないわ。わたしも掃除婦になろうかしら」
リゼットがそう言うと、テオが真面目な顔で続けた。
「俺が掃除婦になってもいい」