皇帝陛下の花嫁公募
 もしリゼットが皇帝の花嫁に首尾よくなれたとしたら、これから先、農作業の手伝いなんてできるはずもない。ということは、しばらくではなく、永遠に来られないかもしれないのだ。

 皇帝に選ばれなくても、もうそろそろ結婚しなければならない年齢だということもある。

 彼らはいつも一緒に楽しく働いていた仲間だったが、もう二度と会えないのかもしれない。そう思うと、涙が出そうになったが、なんとか泣くのは我慢した。

 自分が王女だとは知られてはならないから。

 リゼットはすぐまた会えるような素振りで別れを告げた。

 そして、とうとう国を発つ日がやってきた。

 その日、リゼットは朝から落ち着かなかった。城中の人達もリゼットが帝都に行くことを知っていて、なんだかそわそわしているようだった。

 弟妹達はまるでリゼットがそのまま結婚してしまうかのように、目を真っ赤にしている。昨夜、泣き腫らしたのだという。

「わたし、まだ皇帝に選ばれるかどうかも判らないのよ?」
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