皇帝陛下の花嫁公募
 そう言ったものの、リゼットもまたここに戻ってこられるかどうか自信がなかった。

 何故だろう。自分が皇妃になる可能性なんて、そんなに高くないと思うのだが。自分が立候補しようとしているのだから、国中の娘達が集まるに違いない。だいたい条件が大雑把すぎる。

 健康で未婚の娘。その上、身分は問わないというのだ。

 それに当てはまる娘達の中で、自分が一番とはとても思えなかった。

 それなのに、どうして弟妹達ともう会えないような気がしているのだろう。彼らが自分との別れを永遠のものみたいに悲しんでいるからだろうか。

 城中の人々が見守る中、馬車に乗り込む直前、見送ってくれる父王に挨拶をした。

「では、行って参ります、お父様」

 父王の目にも涙が浮かんでいる。

「ああ。気をつけて行くんだぞ」

「役目が果たせるように全力を尽くします」
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