皇帝陛下の花嫁公募

 裏庭には、衛兵達がよく的当てゲームで遊んでいる場所があった。板が並べてあり、的もいくつもある。衛兵の間でこの遊びが流行っていた時期があったが、彼らの中にはまだこれを続けている者達がいた。

「懐かしいわねえ」

「お母さま、ホントに知ってるの? やったことあるの?」

 リゼットは『アレ』がなんなのか、やっと判った。アンドレアスはエアハルトに的当てゲームを教えていたのだ。

「もちろんよ。すごく上手なんだから。エアハルトより上手だと思うけどなあ」

 わざと挑発すると、エアハルトはムキになってきた。

「ウソでしょ? ボクのほうがぜったい上手いよ!」

「勝負する?」
「ウン」
 リゼットがシャルロッテを下ろすと、アンドレアスが近くの小屋から弓矢を持ってきた。エアハルトのはかなり小さな弓矢だ。子供用にわざわざ作らせたようだ。

「エアハルトはここの線から。大人はここからだ」

 もちろん同じ条件では勝負できない。リゼットは頷いた。
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