皇帝陛下の花嫁公募

 アンドレアスはシャルロッテを抱き上げ、その可愛らしい耳に甘い声で囁く。

「お姫様はここから見るんだ。すごく危ないし、怪我でもしたら大変だからね」

「ウン。わかったわ、お父さま」

 まずエアハルトから矢を射る。ちゃんと的に当たっているのを見て、思わず拍手をしてしまった。

「すごいじゃないの!」

 褒められて、エアハルトは有頂天になっている。胸を張っていて、その仕草が可愛らしい。

 リゼットは自分にと渡された弓矢を手に取る。

「久しぶりだわ!」

 不意に懐かしさが込み上げてくる。花嫁試験の最終日、リゼットはこの弓矢の腕前をたくさんの人の前で披露したのだ。

 アンドレアスと目が合う。

 彼もまたあのときのことを思い出しているようだ。

 純粋な乙女だったあの頃のことも……。

 夜ごと、彼と会っていたことも。
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