皇帝陛下の花嫁公募

 リゼットは決められた場所に立ち、矢をつがえ、弓を構える。狙いを定めて、矢を放った。

 的の真ん中に当たった矢を見て、エアハルトは一瞬声を失っていた。

「……すごい」

「さあ、次はあなたの番よ。頑張って。あなたならできるから」

「も、もちろんさ!」

 エアハルトは負けず嫌いなのだ。どんなゲームでも勝つまでやる。リゼットは乳母や子守りに、ゲームでわざと負けてやるなんてことはしないように言っている。

 なんでも言うことを聞いてくれる大人達の中にいるからこそ、自分の思うとおりにならないことがあると知ってほしいのだ。

 その後、何度か交互に矢を射たが、リゼットの圧勝だった。

「まだ腕は衰えていないようだな。さすがだ」

「お母さま、すごーい」

 アンドレアスとシャルロッテの賞賛を得て、リゼットは顔をほころばせた。

「ありがとう」

 リゼットはシャルロッテの頬にキスをすると、悔しがっているエアハルトの前に屈み込んで、同じようにキスをする。だが、彼の顔に笑みはなかった。半ばふてくされている表情をしている。

「どうやったら、そんなに上手くなれるの?」

「何度も何度も練習したらなれるわよ。お母様はエーリク叔父様より上手なんだから」

「お父さまよりも?」
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