皇帝陛下の花嫁公募

 リゼットはアンドレアスを見上げて、にっこり笑う。

「いいえ。……お父様はわたしに負けたくなくて、それはそれはたくさん練習したのよ。そうしたら……」

「そうしたら……?」

「わたしと同じくらい上手になったの」

 エアハルトはぱっと明るく笑った。

「じゃあ、ボクもがんばる!」

「偉いわね。その調子よ」

 リゼットとアンドレアスが笑っていると、シャルロッテが急に言った。

「あたしもやる!」

「シャルロッテにはまだ早いわよ」

 何しろ彼女はまだ三歳にもなってない。

「やるの! あたしもうまくなるもん」

 頑固な性格はどっち譲りなのだろうか。シャルロッテは矢を射てみるまで、納得しなかった。実際にやってみて、自分にはまだ全然できないのだと判ると、悔しそうな顔をする。

「三さいになったら、またする!」

 その宣言に、アンドレアスは呆れていた。

「ほら、どっちも君にそっくりだろう?」

「違うわ。あなたにもそっくりなのよ!」

 結局、家族全員が頑固なのだ。
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