皇帝陛下の花嫁公募
 その夜、リゼットと母妃は、祖父とその愛人に歓迎の夕食会を開いてもらった。

 アマーナリアにはないようなご馳走を用意してくれて、それは嬉しかったが、夕食会には祖父の友人や取引相手も招待されていて、リゼットと母妃はなんとなく見世物になった気分だった。

 客はみんなリゼットの美しさを褒め称えて、花嫁に選ばれるに違いないと持ち上げてくれたものの、それが本心ではないことはそらぞらしい笑みを見れば判った。

 中には、好色な目を向けてくる者もいて……。

 母妃が多額の持参金と共に王族に嫁いだことを知っている者達は、リゼットも金で買えると思い込んでいるようだった。

 とはいえ、それは間違いではない。

 アマーナリアに必要なのは富だからだ。王族として生まれた者は王太子であるエーリクも含めて、みんなお金で買われる運命だった。

 でも、いくらお金を積まれても、愛人なんかにはならないわよ!

 既婚者のくせに舐め回すような目で見てくる商人を、リゼットは氷のような眼差しで見つめ返してやった。

 同じお金で買われるにしても、アマーナリアの王女として恥ずかしくない嫁ぎ先は確保したい。
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