皇帝陛下の花嫁公募
 翌日、リゼット達は宮殿に向かった。

 大帝国に君臨する皇帝の住まいなのだから、さぞかし素晴らしい宮殿だろうとは思っていたが、馬車の中から見えるその景色に驚いた。

「まあ……見て! お母様!」

 広大な敷地を飾りのついた華麗な高い柵にぐるりと囲まれていて、その隙間から美しく整えられた庭園と噴水、そしてその向こうに壮麗な宮殿が建っていた。アマーナリアの古い建築様式の城のことを思い出して、そのあまりの違いに愕然とする。

 わたしなんかがこんなところに来るのは間違いだったのでは……?

 いくら身分は問わないと言われても、これを見たら、その辺の小娘が皇帝の花嫁になろうなんて思わないはずだ。
「リゼット……。わたし達、こんなところに来て、よかったのかしら……」

 母妃も弱々しい声を出している。

 そもそも彼女は帝都育ちなのだから、この宮殿のことは知っていたはずだ。けれども、長年アマーナリアにいたから、感覚が田舎寄りになっていたのかもしれない。
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