皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットは素早く夜着を脱ぐと、動きやすい服装になった。ドレスではない。男の子の服装だ。

 長い髪をまとめて帽子の中に押し込むと、少年のような姿になる。

 そのとき、小さなノックの音がして、扉が開かれた。リゼット付きの侍女ナディアがしずしずと朝食を持って、入ってくる。彼女はリゼットの姿を見て、顔をしかめた。

「姫様、また畑へお出かけなさるおつもりですか?」

 リゼットは肩をすくめた。

「ええ。だって、王室の人間は、国民がきちんと作物を育ててくれているから暮らしていけているんだもの。お手伝いするのは当たり前のことよ」

 慎ましい国民性を持つアマーナリアの人々は真面目に働き、特に欲張らず、みんな仲良く助け合い、それなりに楽しく暮らしてきた。

 王室も贅沢を敵としていて、王が主に行うのは神に祈りを捧げることで、そのお返しに、国民からは生活に必要なものはなんでも提供されていた。だからこそ、王室の人間は彼らに感謝しなくてはいけないのだ。
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