皇帝陛下の花嫁公募
 ということは、今すぐ選別されるわけではないようだ。ともかく、これで花嫁志望として名前を登録されたということだ。

 試験というものに不安は残るが、なんとか勝ち抜いて見せる。伊達に教育は受けていない。確かにリゼットは野外活動にばかり力を入れてきたが、きちんと勉強はしている。

 それに、上流階級の娘が身に着けておくべきことは一応できる。

 たとえば、ダンスや歌、楽器、刺繍などのことだ。あまり得意ではないが、そこは情熱で乗り切ってみせよう。
 試験が乗馬なら、楽勝なんだけど。

 勝ち抜くというからには、恐らく試験は一つではないのだろう。だが、リゼットはなんとしてでも最終候補には残るつもりだった。

 皇帝に選ばれるかどうかだけは運を天に任せる。というか、それ以外にない。皇帝がどんな男性か判らないが、やはり女性に関して好みというものはあると思うのだ。

 それはもう運でしかないでしょう?

 男性達から退室を促されると、また女官が苛立ったのが判った。彼女が何か文句を言い出す前に、リゼットは立ち上がった。

「それでは、よろしくお願いします」

 彼らはこれからの試験の判定に関わってくるかもしれないのだ。彼らに怒りを買うよりは、なかなかいい花嫁候補だと思ってもらうほうがいい。
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