皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットは母妃を促して、部屋から出た。すると、最初に出てきた女性がやってきて、案内してくれる。

「どうぞこちらへ」

 今度はどこに案内されるのだろう。

 そう思いながら歩いていると、角を曲がったところで背の高い衛兵にぶつかった。

 体重の軽いリゼットは弾みで転んでしまいそうになったが、よろけただけで堪える。

「ごめんなさい。痛かった?」

 衛兵に話しかけると、妙に大きな帽子をかぶった彼は頷いた。帽子が大きすぎて、顔がよく見えない。

「よかった。でも、歩くときはちゃんと前を見てね」

 リゼットはにっこり笑いかけて、案内された部屋に入った。そこでしばらく待つと、無事、護衛と合流できて、馬車にもすぐに乗り込むことができた。

「これから大丈夫かしら……」

 母妃は今更ながら弱気な発言をしている。

「大丈夫よ! 任せといて!」

 根拠のない自信を見せながら、リゼットはきっぱりと言った。
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