皇帝陛下の花嫁公募
 アンドレアスは変装して、花嫁志望の娘達をこっそり眺めていた。

 衛兵の格好をしていれば、宮殿のどこにいても怪しまれる心配はない。しかも、娘達はまさか皇帝がそんな格好でそこら辺にいるとは思わないから、本性を現してくれるだろうと考えたのだ。

 だが、それは予想以上の収穫を得た。

 まずアンドレアスは娘達が馬車から降りるところから見ていた。宮殿の女官に横柄な態度を取る者もいた。案内された部屋に文句をつける者もいた。

 彼女達は待ち時間の間に、くだらないおしゃべりをしていた。くだらないどころか、醜い野心も見せつけてくれた。敵と思う者には聞こえよがしに悪口を言ったり、嘲笑したり……。

 その時点で、アンドレアスはこのくだらない催しをやめようかと思ったくらいだ。

 ところが、金色の髪をなびかせて現れた一人の娘に、アンドレアスは心を奪われた。

 今も胸がドキドキしている。

 彼女は美しく可憐ではあったが、どこか毅然としていた。皇帝の花嫁になれるかもしれないというふわふわとした考えでやってきたというより、確固たる信念の許にやってきた印象を受けた。
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