皇帝陛下の花嫁公募
 とはいえ、手伝うのが王女だと思うと、遠慮するだろうから、こうして身元が判らないように変装している。

 今はただのミーゼンという少年だ。

 同い年で幼い頃からリゼットの傍にいるナディアは溜息をついた。

「いい加減になさいませ。そんなことより、花婿候補の絵姿をご覧になって、どなたか選んだほうが……」

「まだ結婚はいいわ。もう少し先で」

 いずれしなくてはいけないことは判っている。けれども、今はまだその気になれない。

 だって、恋もしたことがないのに。

 いや、恋をしたとしても、その相手とは結婚できない運命にあるのだが、せめてそんなときめきを経験してから結婚したいと思っていた。

 結婚とは……たぶん諦めの境地でするものなのよ。

 政略結婚以外、許されてないいのだから、リゼットがそう思うのは当たり前のことだった。

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