皇帝陛下の花嫁公募
「どこから来たんだ?」

「それは……田舎から。国の名前を言っても、誰も知らないって言うようなところから」

 アマーナリアだと言っても、きっと彼には判らないだろう。どこにあるのかと訊かれたくない。

「そうか……」

 彼は手を伸ばしたかと思うと、リゼットの帽子をさっと取り去った。

 リゼットは慌てて頭を押さえたが、まとめていた金色の長い髪がくるくると落ちてきた。

「こんな綺麗な髪を隠すのはもったいないな」

「ど、どうして女だって判ったの?」

「すぐに判ったさ。抱き留めたときに身体に触れたから」

 リゼットは顔を赤らめた。

「そんな格好をしているのは何故だ?」

「市場に行きたいって言ったら、危険だと言われたから。変装するならいいって護衛に言われたの。男の子の格好なら身軽で動きやすいし……」

 何より慣れているからだが、そこまで言うつもりはなかった。

「護衛か……。君はいいところのお嬢さんなんだな?」

「ええ、まあ……」

 王女だと告白したら、彼は驚くだろうか。それとも、嘘か冗談だと思うかもしれない。
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