皇帝陛下の花嫁公募
「本当の名前はなんて言うんだ?」

「リゼットよ」

「リゼット……」

「本名は違うけど、わたしはそう呼ばれているの。あなたにこの名前で覚えていてほしいわ」

 エリーゼティアなんて気取った名前ではなくて。

 リゼットのほうが、自分に合っている。

「そうか……。そうだな。なんだか君はリゼットという感じがしてきた。おてんばなお嬢さん」

「そうでしょ?」

 リゼットは明るく笑った。

「それで、しばらく君はこの町にいるのかい?」

「ええ……」

 いつまでいることになるのかは判らない。審査が始まって、すぐに花嫁になれないと判ったら、やはりすぐに帰ることになるのだろうか。

 リゼットはちらりとアロイスの顔に目をやった。

 彼のような人が結婚相手ならいいのに……。
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