皇帝陛下の花嫁公募
「いや……。君の美しさに適うわけがない」

 アロイスは頑固にそう言い張っている。

 恋をすると、悪い面もすべてよく捉えてしまうそうだけど、彼もそうなのだろうか。嬉しいけれど、なんだか気恥ずかしい。

「ありがとう……。でも、とにかく選ばれなくても、できるだけのことをしなくては。試験があるんですって。どんな試験か教えてくれなかったけど、やれることはやりたい。父の期待を裏切りたくないから」

 父だけでなく、国の期待がある。王国を受け継ぐエーリクのためにも、アマーナリアに富をもたらす機会を自分の怠慢で奪うわけにはいかなかった。

「もし、花嫁に選ばれなかったら、君はどうする?」

 リゼットはまた目を伏せた。

「……父の勧める人と結婚しなくては」

「君はお父さんの言いなりなのか?」

「仕方ないの。それが運命だから」

 王女として生まれた自分の人生は、最初から決まっているのだ。問題は、誰に嫁ぐか、だけだ。

「俺達が出会ったのも運命だとは思わないか?」

 運命……。

 本当にそうだったらいいのに。
< 73 / 266 >

この作品をシェア

pagetop