皇帝陛下の花嫁公募
 アロイスは納得したように言うと、深く頷いた。そして、リゼットの手をそっと握ってきた。

 ドキリ。

 手を握られただけで、リゼットの胸は高鳴った。

 彼の大きな手に自分の華奢な手が包まれている。そんな感じがして、うっとりしてくる。

「君はとにかく皇帝の花嫁になる試験を受けなくてはならない。しばらくこの町にいるということだろう?」

「ええ……」

「それなら、また会えるな?」

 にっこりと笑いかけられて、リゼットは否定の言葉を出せなかった。

 それに……やっぱりわたしも会いたいから。

 深入りをしなければ大丈夫。そう思いつつ、もう深入りしているような気がしてならない。

「ええ……。でも、昼間はもう外に出られないの。出られるけど、護衛が絶対ついているから」

「ああ、またこの時間に来る。窓を叩くから、そのとき鍵を開けてくれればいい。泥棒なんかが忍び込んできたりしたら大変だから」

 リゼットは頷いた。
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