皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットは少し溜息をつき、部屋の中に入る。そして、窓を閉めて鍵をしっかりとかけた。

 カーテンも閉めてしまうと、もうここで起こったことはなかったかのように思える。

 蝋燭の炎が照らす豪華な部屋。

 でも、彼が座った長椅子が目に入り、指先にキスされたときの感触が甦ってきた。

 ああ、わたし……。

 アロイスが好き。大好き。一緒にいたい。

 これが恋なのだろうか。

 リゼットは彼の顔を思い出すだけでドキドキする胸に、そっと手を当てた。

 でも、皇帝の花嫁になるのを諦めるわけにはいかない。なんとかして勝ち残らないと。もちろん皇帝に選ばれなくても、アロイスと幸せになる道なんて残されているわけがないのだが。

 それでも、ほんの少しだけ夢を見ていたい。

 たとえ、よくないことだと判っていても。
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