皇帝陛下の花嫁公募
 アロイスと名乗っていたアンドレアスは宮殿の裏門へと向かった。

 門番に賄賂として、煙草を数本渡すと、門を開いてくれる。

「夜遊びは楽しかったか?」

「ああ、楽しかった。また明日頼むよ」

「もちろんさ」

 そんな会話を交わしながら中へと入っていった。門番は自分のことを衛兵の一人だと思い込んでいる。もちろん、まさか皇帝がこんな格好で外に出るとは思わないだろう。

 それにしても、アマーナリアの王女がまさか自分と同じように変装をして、遊びに出かけていたとは思わなかった!

 リゼットとは可愛い名だ。エリーゼティアよりずっといい。

 ますます親近感を覚える。

 とはいえ、市場で出会ったのは偶然だった。変装して、庶民の生活を視察することはいつもしていることだ。

 そして、最初、強面の男に絡まれていた少年を助けたつもりだったのだ。だが、顔をよく見ると、彼女だと判った。

 帽子から少し見えていた金髪。それにあの緑の瞳!

 あんな色の瞳は彼女しか見たことがない。

 露店の裏に連れていって、帽子を取ったとき、彼女の本当の姿が見られた。宮殿では飾りをつけたり、凝った髪形をしていたからだ。肩から背中へと流れていく長い黄金の髪にはうっとりするしかなかった。
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