それでも、わたしはこれを恋と名付けたい。
「……なんて、な。いい上司ぶってみたけど、泣かせてたら世話ないな。
ずっと好きなんだ、吉川のこと」
「っ、うぅっ……」
涙と、嗚咽が止まらない。
子どもみたいに泣きじゃくるわたしのそばで、ずっと頭を撫でてくれる人。
風は冷たいはずなのに、
触られたところは、すごく温かい。
わたしが求めていたのは、
楽しい笑い声だけじゃなくて、
包み込んでくれる安心感、だったのかもしれない。
わたしが落ち着くまで、一ノ瀬さんは何も言わずにそばにいてくれた。
「……振られちゃったんです、彼氏に。
本当は、今日で1年を迎える予定だったんですけどね」
「そう、だったのか…
俺はずっと吉川を見ていたけど、彼氏がいることさえ知らなかったんだな……」