MちゃんとS上司の恋模様
出会いたくなかったドS男
「麦倉さん、昨日言っていた書類出来た?」
「あ、はい。共有フォルダに入れてあります」
「えっと……ああ、これか。助かったよ、ありがとう」
いえいえ、と営業課の先輩に返事をしたあと、再び書類作成に精を出す。
すると、今度は後ろから声をかけられる。
「麦倉さん。このメモは何?」
「十時半頃、A社営業部長の榊さまからお電話をいただきました。不在だと伝えましたら、戻られたら連絡がほしいとおっしゃっていました」
「了解。電話してみる。ありがとう」
「お願いします」
今日も今日とて仕事は忙しい。特に今週は目の回るほどの忙しさだ。
先週はちょっと暇だったから、できれば均等に仕事をならしてくれると助かるのだけど。
そんなことは無理だとわかっているが、思うだけだから許してほしい。
私はこっそりと苦笑いを浮かべた。
麦倉真琴(むぎくらまこと)二十五歳。
ショートボブの髪は、明るすぎることもなく、かと言って暗すぎでもないぐらい。ちょうどいい塩梅でブラウン色にカラーリングしている。
背丈も低すぎもせず、高すぎもせず……いろんな意味で平均的な背丈に体型。
笑顔が素敵! とよく言われるが、けっして美人ではない。それはわかっている。みなまで言うな。
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