MちゃんとS上司の恋模様




 藍沢さんに連れてきてもらったのは、ホテルの最上階。夜景がとてもキレイに見ることができると有名なレストランだった。
 だが、お値段も張ることも知っている。まさか、このお店に連れてきてもらえるなんて思っていなかった私は大いに慌ててしまう。

 だけど、ホテルマンたちがいる前で騒いでしまったら、藍沢さんに恥をかかせてしまうだろう。
 藍沢さんは前もって予約をしてくれていたみたいで、夜景が一望できる特等席で食事をすることになった。

 嬉しいのだけど、こんなにしてもらうほど私はこれといって何もしていない。思わず恐縮してしまう。

「こんなにしていただくほど、私は特に何もしていないですよ?」

 誰にも聞かれないように細心の注意を払いながら藍沢さんに言うと、彼は肩を竦めた。

「麦倉さんは、とても律儀で遠慮深いんだね」
「そ、そんなことは……」
「そういう子。僕はとても好きだな」
「っ!」

 ですから、そんなふうにサラリと心臓に悪いことを言わないでください。
 目を泳がせて動揺していると、藍沢さんはクスクスと声を出して笑う。

「麦倉さんのおかげで助かったんだから。これぐらいはさせてほしいな」

 そう言って優しげに笑い、藍沢さんは私にワインを勧めてきた。

 とてもフルーティーでおいしい。お料理にもとてもよく合う。
 藍沢さんに勧められるがままに飲んでしまった。いつも以上にたくさん飲んでしまったのだろう。身体がフワフワしていて気持ちが良い。

 食事が終わって立ち上がったときには、すっかり酔っ払ってしまっていた。

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