MちゃんとS上司の恋模様
「仕事の電話が入ってしまったので僕は帰るから。ゴメンね、真琴ちゃん。この埋め合わせはいつか絶対に。ホテル代は払っておくから、ゆっくり泊まっていって?」
「あ、あの……藍沢さん?」
私が声をかける間も与えられないほど、藍沢さんは必死な形相でカバンを持つ。
そして、化け物から逃げるような勢いで部屋を出て行ってしまった。
彼の後ろ姿を見て、思わずあ然としてしまった。
一体何が起きたのか。さっぱり意味不明である。
まだ酔いは抜け切れていない。とりあえず、何も考えないで眠ってしまおうか。
ウトウトし始めた私の耳元で、先ほど藍沢さんに放り投げられたスマホが鳴り出した。
スマホを確認すると、何度も何度も同じ電話番号からかかってきている。須賀主任からだった。
一体何用だ。そうは思ったのだが、まだ頭がフラフラしているので起き上がりたくはない。
通話を押し、寝たままで耳にスマホをつけた。すると、開口一番。須賀主任は私を怒鳴り散らしてきた。
『バカ!! 何度も電話しているのに出ないとは良い度胸だな?』